その後

続けざまにホットライン*1が鳴り、次々と初療へ患者さんが運ばれてくる。
うちの病院は初療室が第3治療室まであり、それが全て埋まる事態に。
第1治療室は先ほどの吐血の患者さん。
第2治療室は腸閉塞でおなかが筋性防御ばりばりで腹膜炎おこしてる患者さん。
第3治療室は意識消失で階段をころげおちた、外傷の患者さん。
当然、スタッフも3つに分散され、てんやわんや。
うちはその中の3つ目の外傷の患者さんをまかされつつ、
もう一人の1年目研修医がまかされた第2の患者さんのヘルプにたまに行く感じ。


一番緊張したのが、そのヘルプにいったときの話。
右腕にはすでに点滴のラインが確保されていたのですが、
緊急手術になるということで、輸血用に左腕にもラインを確保することに。
しかし、このおばあさん、血管が細くて見えない上に、
血管の壁がもろくて、慎重にささないとすぐに針が壁を傷つけて、
点滴がもれてしまうんですよ。
おまけに、輸血用のラインということで、普通よりも太い針をささなければならず。
そういう条件下で何回かライン確保を試行された模様でしたが、
なかなかうまくいかず、見える場所はほとんど使われていた状態。
そういうとこでうちがラインを確保しに呼ばれたわけですよ。


ヘルプに入ったとき、かろうじて確保できそうな血管は1本のみ。
ちなみに、その1本もあまり長さがとれず、せいぜい2回ぐらいしか挑戦できないぐらいの長さ。
つまり、2回失敗すればもうラインの確保はほぼ絶望的という状況。
まずは、入れば理想的な18ゲージという太い針での挑戦。
しかし、血管の太さを見るに、どう考えても入らなさそうな予感。
そして案の定、血管を傷つけてもれてしまう。
もはや残すは1箇所のみ。絶対失敗できない状況。
相手は、普通なら22ゲージという細い針でも、入るかどうかわからない血管。
次善策としてその中間の20ゲージの針を選択。
そして後がない状況下での緊張感でいざ刺入。


これは震えましたね。
やっぱり後がない状況ってのはこわいっすよ。
覚悟を決めないとってやつですな。
まぁなんとかその1発がうまく入ったのでよかったですけどね。
救急の現場ってのは、こんな後がない状況が多いわけです。

*1:救急隊から病院の救急リーダーの持つPHSへの直通電話のこと。まずほとんどが初療のケースとなる。