皮膚科

思ったよりは忙しくなかったり。
うちの担当してた患者さん、壊死性筋膜炎って病気で緊急手術だったんですよ。
んで、手術前はけっこう意識はあった状態だったんですね。
そんで、いざ手術開始してみたら、思ったよりも病巣が拡がっていて、
当初は右足太ももの壊死した組織を切除するだけの予定だったのが、
急遽右足を付け根から切除することに。
もちろん、そうなるとちっとやそっとの出来事じゃないですから、
そのままICU(集中治療室)に運ばれて、薬で眠らせたまま管理って状態に。
そして10日以上経過して、ようやく容態が安定してきたので、
土曜あたりから薬を少なくして、だんだんと覚醒してもらうことに。
そして今日、ほぼ完全に覚醒したので、呼吸管理のためにのどにいれてた管を抜管し、
自力呼吸に切り替えることに。


ただ、ここで問題なのが精神的なケア。
なんせ、最初は足の皮膚周辺を切除するだけの手術の予定だったのが、
麻酔で寝て、起きてみたらいつのまにか10日以上経っていて、
しかも右足がまるごとなくなってるって状態ですから。
もし自分だったら、「なんじゃこりゃーー」って感じじゃないですか。
それをケアするために、家族の方々を呼んで、
本人と家族の方々に一緒にムンテラ(説明)したわけです。
見たところ、外見上はそれほどショックを受けてないようでしたが、
おそらく内心はそうとうショックは受けてるでしょうねぇ。
そこんところのケアも、これからまた重要になってくるわけです。


しかし、どんな理由であれ足がなくなったら困りますよね。生活とか。
きられた方としても、きらずには済まなかったのだろうか、と疑問もでるでしょうし。
今回の場合は、きらなければ命すら危うかったと思われます。
ちょうど緊急手術の際に、整形の先生がいたからよかったものの、
いなかったらおそらく間に合ってなかったでしょう。
その点でも、患者さんはある意味幸運だったと思います。
もちろん、足を失ってしまったことにかんしては不幸だとは思いますが、
命が助かる代償として足を1本失ってしまったと考えていただくしか……


壊死性筋膜炎ってのは、皮膚の奥のところに細菌の感染がおこったのが原因でして。
なぜ感染したかについてはいろいろな可能性がありえますが、
実際に感染してしまったことに関しては、運が悪かったとしか。
んで、感染がどんどん拡がっていくと、皮膚とかに栄養を送ってる血管にまで入って、
血管内に血栓をつくって詰まらせてしまうんですよ。
そうなると、栄養のいかなくなった皮膚などの組織は死んでしまい(壊死)、
さらに菌は血管内を通って全身にまわってしまう可能性もあります。
そうなると、敗血症というのになって、死ぬ危険性が極めて高くなってしまいます。
治療としては、壊死組織周辺の広範な切除、ならびに血管内への抗生剤の投与です。
つまり、感染したところを完全に取り去って、血管内に残った奴もやっつけると、
こういう仕組みです。


今回の場合、感染が大腿四頭筋という筋肉にまで及び、
また循環状態の改善のうえでも、右足をきらなければならない状態だったわけです。
ちなみに右足をきるとそこに流れてた血液を送らなくてすむようになるため、
心臓の負担が減るために、循環状態が改善されるって仕組みです。
そういった利点と、足を切断した後の患者さんの不利益とを考慮した上で、
患者さん本人は麻酔で寝ているため承諾を得られない状況ということで、
ご家族のかたに了承を得た上で切除した、というところです。


とまぁ、こういう患者さんなわけで。
ずいぶん長々と書きましたが、いろんな意味で勉強になりますね。
患者さんも覚醒したことですし、これからはコンタクトもとれそうなので、
いろいろとお話を聞かせてもらおうとおもいまする。
あ、それとレポートやプレゼンの準備もしないt(ry